『 つゆのあとさき ― (2) ― 』
― あっりがとうござぃましたぁ〜〜!!
甲高い声に送られて 亜麻色の髪の女性が店から出てきた。
軽い足取りにぴったりな ― というよりも少々ぴらぴらしたファッションに身を包み、
彼女はとても満足そうだ。
「 ふんふんふ〜ん♪ 最近はこんなのが流行っているのね〜
なんだか 舞台のお衣裳みたいだけど・・・ 楽しいからいいわ。 」
チュール使いが多いスカートにぴったりのカットソー。 しなやかな身体によく似合っている。
「 やっぱりね〜 夏物は軽くなくっちゃ・・・ 思えばわたし、ずっと春服でいたのよねえ。 」
濡れてしまった服は 袋にいれてもらった。
最初に寄ったシューズ・ショップでも キャンディ・ボックスみたいな軽い靴をみつけた。
「 ふ〜んふんふん♪ こんな軽い靴があるのねえ・・・バレエ・シューズみたい。 」
トン ・・・と軽く踏み出せばすこしだけでも飛べそうな気がする。
― ここは 地元・ローカル駅近くのショッピング街・・・
だから彼女が物珍しさに誘われて買った・当世風流行服 は ― 所謂お手軽品、
いつもの彼女だったら 手を出さない類のものだ。
だけど 今日の彼女はご機嫌だった。
どうも慣れぬ湿気の影響か、パリジェンヌの審美眼は 曇っていたのかもしれない。
「 さあて。 ヨコハマまで行ってみようかしら。 港街って聞いたし。
マルセイユみたいな街なのかなあ 」
彼女はウキウキとターミナル・ビルへつながる通路を歩いていった。
トントン ・・・トン ・・・!
「 フラン? フランソワーズ? ・・・ 入ってもいいかなあ? 」
さんざんノックしてから ジョーは遠慮がちにドアを開けた ― そ〜〜っと ちょっとだけ。
「 あの・・・・ 朝御飯 ・・・ よかったら食べない? 」
返事がない。 いや 細い隙間からはヒトの気配が感じられない。
「 あの〜〜 フラン? あの ・・・ いないのかい、開けてもいい? 」
返事はない。 ・・・ さすがのジョーも 我慢は限界になり・・
「 ― 開けるよ! ごめん・・・ 」
― バン。
「 あのさ フランソワーズ。 朝御飯だよ ・・・ あれれ・・?? 」
目を瞑って飛び込みイッキに捲くし立て ― るつもりだったのだが。
誰もいない、きちんと整頓された部屋が 彼の目の前にあるだけだった。
「 いない・・・? え それじゃ・・・ 外、かなあ? 洗濯モノ、干し??
いやだって雨だし。 あ! 乾燥機、使っているのかなあ・・・ う〜ん ・・・ 」
彼はしばらく空っぽの部屋で考え込んでいた。
「 いや。 ランドリー・ルームにはいなかったし。 う〜〜ん??
あ それじゃ買い物に ・・・ いや、この雨だもんな、出かけるとは思えないし・・・ 」
― おお〜い ジョー ・・・?
博士の声が階下から聞こえてきた。
「 ? あ ・・・博士・・・ はい〜〜 今 行きます〜〜 」
ドタバタ バタ ― 彼は階下に素っ飛んでいった。
「 博士 なんですか〜 」
「 うむ ・・・ 彼女は出掛けたらしいな。 」
「 ― え? 」
ほれ、と差し出された紙を受け取り ジョーはまじまじとみつめた。
『 ちょっとでかけてきます フランソワーズ 』
丁寧に書かれた文字 ・・・ 多少歪んでいるけれど、ガイジンさんにしては上出来な平仮名・・・
確かに彼女の筆跡だ。 ジョーは穴が開くほど見つめてしまう。
・・・ このメモ ・・・ 欲しいな 〜・・・
お護りにしちゃ いけないかな ・・・
「 おっほん! どうだね ジョー? 」
「 ・・・ え あ・・・! 」
博士の 少しイラついた咳払いに彼は我にかえった。
「 ・・・ こ これって は 博士〜〜 フランってば出て行っちゃったんだ?
うん でも今ならそんなに遠くまで行ってませんよね? ぼく、フル加速して行けば 」
「 おいおい ジョー、 落ち着け。 これはただのメモだろうさ。 」
「 ・・・ただのメモ ・・? 」
「 ああ。 つまり彼女はちょいとばかり買い物にでも行った、ということだろうよ。 」
「 そ そうですか・・・ 」
「 ふうん? ジョー よ? そんなに気なるかな。 」
「 え? あ え〜と ・・・ そのう。 彼女、朝御飯 食べてないから・・・ 」
「 ほうう?? それでは探しにいってみてはどうかな?
ああ ワシのことは心配いらぬよ。 レトルト食品もいろいろあるしな。
ゆっくり ・・・ いや きっちり捜してこい。 」
「 え で でも ・・・ ど どこへ ・・ 」
「 さあ のう・・・? 若い女性は休みにはどうするか・・・考えてみろ。
ジョー。 気になるオンナノコがいたら ― まずは行動せよ! 」
― どうん ・・・!
思いもかけず、博士の一発がジョーの背中を見舞った。
「 あ は はい! で でかけて来ます〜 あ! き 着替えないと〜〜 」
ジョーはすっ飛び上がり ― 自室に走っていった。
・・・ やれやれ。
いい若いモノが じ〜っと眺めているだけ、じゃあなあ・・・
ふ ・・・ まあ しばらくは無駄にどたばたして・・・
彼なりに <青春> を楽しんで欲しいのう ・・・
博士はすこしばかりほろ苦い思いで ジョーの立てる騒音を聞いていた。
「 ・・・っと? 財布にハンカチ・・・ え〜と あ! Suica いるよな ・・・
ってでもどこに行ったんだ? ここだったら ・・・ 女子好みな場所って。
ハラジュク とか オモテサンドウ とか かなあ?? 」
「 〜〜〜 靴下 靴下 くつした〜〜はどこだあ〜 ??
あ!! ぱ パンツも新しいのがいい・・・かな?? 」
ばたばた どたどた ― 引き出しをひっくり返したしてやっと着替えてジョーはとりあえず
家から出発し ― 循環バスに飛び乗りローカル駅に出た。
「 ・・・・えっと? やっぱ都心・・・ あ! ヨコハマって線もあるよなあ・・・ 」
ジョーは駅の改札口でしばらくウロウロしていたが ええい! 後は ・・・! と
丁度到着した東京行きの電車に ぽこん、と乗ったのだった。
― う〜〜〜 あ あとは ・・・・ あとは なんとかなる! かも・・・
ゴト・・・ン ・・・! シュ −−−− 〜〜〜!
電車はジョーの心境なんぞにはお構いなしに 首都めざして軽快に動きだした。
そのころ ・・・
「 え・・・っと? どこで乗り換えればいいのかしら? 」
フランソワーズは駅の案内板の前にじ〜〜〜っと佇んでいた。
地元の最寄駅、と言っても <家> からは循環バスに20分は乗らなければならない。
そして今まで公共の交通機関を使って遠出をしたことがないので 馴染みがないのだ。
彼女はしばらく駅コンコースの中をうろうろした挙句に やっと案内板をみつけた。
「 ・・・ うわ ・・・ 日本語かあ ・・・ 当たり前、だけど・・・ ふう・・・ 」
眉間に思いっきり縦ジワを寄せつつ フランソワーズは案内板を読みはじめた。
「 えっと。 よこはま って字をみつけなくちゃ。 え〜〜〜 ?? 」
地名らしき言葉に英語らしきアルファベットが気紛れみたいに添付されているだけだ。
「 え〜〜・・・?? う〜〜ん わかんない・・・ 自動翻訳機ってちっとも役に立たないのね! 」
だからさ〜〜 先に行ってるってよ
え〜〜 マジっすかあ〜
・・・ 34分 くるぜ。
お〜〜 ヤバ ・・・
どやどやどや ― 彼女の後ろを当世風のワカモノ達が通り過ぎ行った。
・・・ こんな美女に見向きもしない ・・・ のではなく。
フランソワーズは 所謂カル〜〜〜い女子風な服で後ろ向きに立っている。
だから、正真正銘ホンモノの亜麻色の髪 も しっかり染めたギャルっこのアタマ ・・・
としか見えなかったらしい。
地元ギャル なんかにきょ〜み ねえぜ ― が彼らの共通認識、だったのだ。
勿論フランソワーズ自身はそんなことは露ほどもしらず、熱心に案内板に張り付いていた。
「 ・・・ わっかんな〜〜い〜〜 インフォメーションとかないの〜? 」
泣きそうになって彼女が振り返った時 ・・・
ば〜さん ジャマ。
・・・ あ ・・・!
仲間を追ってきたワカモノの一人が 階段で無理な追い越しをした。
途中にいた老女が バランスを崩しへたりこんでしまった。
「 あ!! 危ないッ !! 」
フランソワーズは ぱっと駆け出し階段を駆け登る。
「 大丈夫ですか?? 」
「 ・・・あ ・・・・ は はあ ・・・・ 」
「 立てます? ああ どうぞ、わたしの手に掴まってくださいな。 」
「 あ ど どうも ・・・ お嬢さん ・・・ 」
「 はい ・・・ ゆっくり降りますからね〜 」
「 ・・・ は はあ ・・・ 」
彼女はその老女を ほとんど抱きかかえて階段をゆっくりと降りた。
「 さあ 降りました。 どこかお怪我はありませんか? 」
「 ・・・ だ 大丈夫 ですよ ・・・ ありがとうございます ・・・ 」
「 いいえェ でも乱暴ですねえ〜〜 あの人達 ・・・ 」
「 若いヒトたちは怖いです・・・ あれ。 あなた あの・・・ガイジンさん?? 」
「 え? え ええ・・・ フランスから来ました。 」
「 まあ〜〜〜 観光ですか? 」
「 い いえ・・・ あの〜 この町のハズレに住んでます。 」
「 あれ まあ・・・ 同じ町の方ですか? あらあら・・・お嬢さん、お洋服が・・・
ごめんなさい! 私の傘と荷物が濡れていたから・・・ 」
フランソワーズの おニュウ な今風ワンピはチュールの部分から濡れてしんなりしていた。
「 え? あ ・・・ あァ あの いいです 乾けば ・・・ きっと 」
「 いえいえ 良くありませんよ。 お嬢さん、 ご予定は?
どこかへお出掛けなさるの? 」
「 え ・・・あ あの ・・・。 そのつもり、だったのですけど・・・
あの ・・・ よくわからなくて。 案内板とか ・・・ わたし 日本語、まだよく読めないんです。」
せっかくの服の状態は哀しかったけど、 それを顔に出すほど彼女は子供ではない。
「 まあ まあ まあ! それじゃ ウチに来てくださいな!
もう〜〜私のために・・・とんだご迷惑をかけてしまって ・・・ さあ いらしてくださいな。 」
「 え?? あ あの ・・・・ うわ ・・・ ! 」
階段でへたりこんでいたおばあちゃん は、別人みたく元気になり
フランソワーズの手を掴むとしゃきしゃき歩き出した。
「 あの ・・・ でも・・・ 」
「 いいえ、お願いしますよ。 私の用事?? いえ、大した用事じゃないのよ。 どうでもいいわ。
さあ ・・・ あ タクシー !! 」
おばあちゃんは駅のタクシー乗り場で 大声で車を呼びつけた。
「 あ あのぅ 〜〜〜 」
「 さ 乗って 乗って キレイなお嬢さん。 あ、 海岸通りのね、商店街まで。
そこの 緑風園 の奥までお願いね。 」
「 ハイ。 」
タクシーは 駅前からまたず〜〜〜っと海岸通りの方に戻っていった。
あ ・・・ また逆もどりだわあ〜〜 ・・・・
フランソワーズの溜息は だーれにも気づいてもらえなかった。
― 次は ヨコハマ〜〜 ヨコハマ ・・・・
「 ・・・え! あ 降りなくちゃ! 」
ぼ〜〜っと外を眺めていたジョーは 車内アナウンスに飛び上がった。
東京まで行くつもりで乗った電車なのだが ・・・ なぜか突然、ヨコハマ という地名に
反応してしまい ― そのまま降りた。
なんか ・・・ フラン、好きそうな街 ・・・みたいな気がするし。
ガイジンさんも多いから 親近感とか持つかもしれないし ・・
「 ・・・ え ・・・ でもどこに行くかなあ・・・ 」
なんとなく駅の改札口を出て またまたジョーの足は止まってしまった。
買い物にでも行ったんだろうよ ・・・
博士の言葉がアタマの中に蘇る。
「 あ。 そっか ・・・ それじゃ ・・・ オンナノコが多いっぽい場所に行けばいいんだよな。
う〜〜ん ・・・? あ! あのビルとか・・? 」
ジョーは駅直結のファッション・ビルへと コンコースを歩き始めた。
・・・ うわ ・・・ こ〜ゆ〜トコ、 初めて だよ・・・
そのフロアには確かに女子は多かった ― というより、歩いているのは女性がほとんど・・・
たまに見る <同性> は ママに手を引かれた坊や だったり 従業員さんだったり。
ジョーは きょろきょろしつつ歩いてゆく。
「 いらっしゃいませぇ 〜〜〜 」
「 ・・・ はい? 」
突然、目の前に飛び出してきた女性のしり上がりの呼び声に彼は思わず反応してしまった。
「 ただいまサマーセール中ですよ〜〜 どうぞ〜〜ご覧になるだけでもォ〜〜 」
「 え ・・・ あ その ・・・・ うわ・・・ 」
サマー・・・って あ。 夏服 ・・・ そっか ・・・
フランってば ず〜っと袖の長いブラウス、とか着てたよなあ・・・
「 あの! 夏服、 ください! 」
「 ・・・ あ はい〜〜 ただいま夏服セール中で〜す♪ 」
さすが売り子のお姉さん、一瞬 は? な顔をしたがすぐに立ち直り営業用にっこり。
真っ赤な顔をした青年を うまうまと店に取り込んでしまった。
「 あ あの う あの〜〜〜 」
「 はい、どんなタイプをご希望ですか? カジュアルですか? 」
「 あ〜〜〜〜 う カ カ カジュアルで・・・ 」
「 はい、畏まりました。 こちらへどうぞ? 」
「 ・・・ は は はい・・! 」
ジョーはおっかなびっくり店内歩いてゆく。 売り子さんがくるり、と振り返る。
「 あの。 カノジョさんにですか? 」
「 え!?? い いえ 〜〜〜 カノジョっていうか・・・ 」
「 ・・・あ わかった。 お母さんにでしょ? 」
「 ち! ちがいます〜〜 ・・・ とんだオバアチャンとか言ってたけど ・・・ 」
「 ああ! お祖母様ですか。 まあ〜きっとお若いおばあさまなんですね〜 」
「 あ は はあ まあ・・・ 」
ふ〜ん ・・・? このコってばハーフっぽいわねえ
あ そうか〜 その <おばあさん>がガイジンなんだわ、きっと
うんうん・・・と売り子サンは勝手に決め込んでしまった。
「 そうですねえ・・・ 品のよいカジュアルで、それならそうですね〜〜 この夏はねえ・・・ 」
「 ・・・え・・・ あ あの〜〜〜 」
ジョーの目の前に レース使いの多いブラウスだの ブルー・グレーなスカートだのが
どんどん運ばれてきた。
「 それでお髪の色は? あ 染めていらっしゃいます? 」
「 え。 これ・・・ 生まれつきなんです ・・・ 」
「 え? あ いえ・・・ お客様のではなく、プレゼントされる方。 」
「 あ ああ。 いえ〜〜 染めてないです、もともと・・・え〜なんつったかな・・・
あ あまいいろ? 」
「 ???? 甘い色? ・・・ ああ! 亜麻色、ですね。 まあ〜〜〜ステキ♪ 」
売り子嬢は ちょいと古いポップスを知っていた・・・らしい。
「 それじゃ これにこれを合わせて・・・ う〜ん ボトムはサイズ、わかります? 」
「 !? ま まさか・・・! 」
「 ですよねえ・・・ いくらご年配の方でも女性にサイズなんて聞けませんものね。 」
「 ・・・ は はあ 」
「 身長は? 細身な方ですか。 」
「 背は ・・・ こんくらい・・・かな。 はい細身です、すっきり。 」
ジョーは背の高さを手で示し、 彼女のしなやかなスタイルを、そして <抱えた>時の感触を
こっそり思い出し 力強く頷いた。
「 まあ そうですか〜 それなら ・・・ サイズはこれくらい、ですね〜〜 」
ふうん ・・・ ハイカラ・ばあちゃん なんだ?
あ そっか〜〜 ガイジンさんのカッコイイばあちゃんなのね〜
・・・どうもかなり想像力過多な売り子さんらしかった。
「 ありがとうございました〜〜♪ 」
たっぷり30分も経って ジョーは両手に嵩張る紙袋をさげて件の店をでた。
ひえ〜〜〜〜 ・・・・ こ これからどうしよう・・・??
そ それに コレ ・・・ どうしよう ・・・
「 さあさ ・・・ こちらへどうぞ、お嬢さん 」
「 ・・・ は はい ・・・ 」
タクシーは一路、海岸通り付近の商店街をめざし ― ずずず〜〜っと通り抜けた。
「 ― あら? 」
「 ああ ウチはね、商店街の奥にありますんですよ。 ・・・ 店とは別に ね。 」
「 お店 ですか ・・・? 」
「 ええ。 代々 茶屋をやっています。 茶屋ってお判りになるかしら?
お茶の葉を商っている店のことですよ。 」
「 あ ・・・ はい、わかります。 わたし、日本のお茶って好きですわ。
博士・・・いえ その ち 父もとても好んでいます。 」
「 まあ そうですか。 それは嬉しいこと・・・ もしかしてお客様かもしれませんね。 」
「 あ・・・ あのう〜〜 わたし、おしゃべりは大丈夫なんですけど・・・
その・・・ 日本語を読んだり書いたりは苦手で・・・ スーパーばかり利用していました。 」
ス − ・・・・。 タクシーは商店街の外れ、大きな松の木がある門の前で止まった。
「 ああ ありがとう。 お釣りは結構よ・・・ 遠くまでごめんなさいね。
さあ お嬢さん、こちらです どうぞ。 」
「 ・・・ は はい。 」
し 知らない方だけど ・・・ 付いていって大丈夫・・・よね?
なんか素敵な方だもの。 距離的にもウチに近いし・・・・
え〜い 思い切ってお邪魔しちゃお♪
フランソワーズは密かに決心して 老婦人の後を付いていった。
「 さあ どうぞ ・・・ あ 足元、気をつけてね。 」
「 はい ・・・ わあ ― お庭 ・・・ 」
彼女は門から一足踏み入れ 目を見張っている。
「 え? ・・・ ああ 日本風の庭園は珍しいかしら? これはね〜
ウチのオジイサンの道楽なのよ。 」
「 ・・・ どうらく? 」
「 まあ・・・ 趣味ってことかしら? さあさ こちらへ。 この飛び石伝いにいらっしゃい。 」
「 は はい・・・ 」
蛍光色のちゃかちゃかした靴は落ち着いた庭ではいかにも安っぽくみえた。
・・・ ヤダ。 わたしったらどうしてこんな靴、買ったのかしら・・・
今更ながら 彼女は気恥ずかしさに頬を染めた。
とんとん ・・・・と石伝いに行けば柘植の茂みの向こうに玄関があった。
「 ― ただいま戻りました。 お客様をお連れしましたよ。 」
引き戸の玄関は軽やかに開き、 老婦人はフランソワーズに微笑みかける。
「 ようこそいらっしゃいました、 お嬢さん。
あ ・・・・ あら。 お名前を伺っていませんでしたね。 私はハタナカといいます。 」
「 こんにちは ・・・ あ わたしは フランソワーズ・アルヌール といいます。
あの ・・・ マダム・ハタナカ・・・ わたし、日本の作法をしりませんので
きっと失礼なこと、してしまうと思うのです。
そんな時にはどんどん注意して教えてください、お願いします。 」
玄関のタタキで彼女はぺこり、とアタマをさげた。
「 まあまあ・・・ なんて礼儀正しいお嬢さんだこと。 はい、わかりました。
ともかくどうぞ、お上がりになって ・・・ あ 靴はそこで 」
「 はい。 あのわたしのウチでも中では靴を脱いで生活しています。 」
彼女は靴を脱いで上がると、すみっこに寄せた。
「 ・・・・ あ ・・・? 」
玄関の間に上がると ― 足の裏には乾いた優しい感触があった。
カーペット? いえ ず〜っと敷いてあるみたい・・・
「 こちらへどうぞ。 お荷物はここに ね。 」
「 ― はい。 」
― フランソワーズの 日本発見の旅 が始まった。
「 ほうほう 岬の洋館ですか。 ・・・いつぞや町内会長から聞いたような・・・
う〜〜ん ・・・ なんといったかな、異国の方が越してきた、となあ。 」
「 おじいさん、しっかりしてくださいな。 まだボケるのははやいですよ。
そう・・・ フランスからいらしたのですか。 」
「 はい・・・ この町は静かで景色もよくて素敵なところだな〜って思ってます。
あ ・・・ この頃はちょっと・・・ 過しにくいけど・・・ 」
案内されたのは ― 恐らく客間なのだろう、不思議な部屋だった。
あ。 ここ ・・・ 和室 よね? タタミでしょ、これ・・・
?? でも上にカーペットが敷いてあってソファがあって。
あら サイド・ボードかしら。 随分変わったデザインね?
所謂古い和洋折衷な部屋なのだが フランソワーズにはわかるはずもなく、彼女はひたすら
物珍しさに目をまん丸にしているだけだった。
「 いやあ〜 ウチのばあさんがお世話になりました。 ありがとう、お嬢さん。 」
「 え い いえ そんな ・・・ 」
「 あらあら どうぞお楽になさってね。 お茶 ・・・ お紅茶にしましたからね。 」
カタリ、と紙と木でできたドアが開いて マダム・ハタナカ が入ってきた。
ふわ〜ん ・・・と紅茶のいい香りがついてくる。
「 ふふふ・・・ ウチはお茶屋なんですけど、紅茶やコーヒーも好きなんですよ。 」
「 いい香りですね。 わああ〜〜素敵なティー・セット ・・・ マイセンですか? 」
「 おう ようおわかりですな。 ワシが若い頃にアチラから取り寄せたものですよ。 」
「 ミルクとお砂糖は どうぞご自由にね。 」
「 はい ありがとうございます。 」
不思議な部屋で 不思議な でも 十分に魅惑的なお茶タイムとなった。
ポリリ カリリ ・・・ 甘い味のする歯応えのある <クッキー> はとても気に入った。
「 ― 美味しいですね〜 これ クッキー ですよね? 」
「 いいえ それはね、お煎餅といって・・・お米の粉で上にお砂糖が掛けてあるの。 」
「 ・・・ お米?? ゴハンと同じなんですか? 」
「 ええ そうですよ。 どうぞ沢山召し上がってね。 ところで今日はどちらへ? 」
フランソワーズは 駅でどうやってゆけばよいのか迷っていたことを告白した。
「 あらまあ・・・ お買い物に? え そのお洋服も? 」
「 はい・・・ 雨でびしょびしょになってしまいましたので 駅に近いビルの中で買いました。
流行の人気の服 ・・・って言われたんですけど ・・・ なんか・・・ヘンですよねえ・・・ 」
「 そう ・・・ ? ちょっと暑いかもしれないわね。 」
「 この季節のお天気は苦手です、あのぅ〜 6月っていつもこんなカンジなのですか? 」
老夫婦は ちょっと顔を見合わせた。
「 そうですなあ・・・ 梅雨はこんな風ですよ、毎年ね。
もう慣れてしまってますから 皆 巧くやり過ごしますがな。 」
「 ― うまくやりすごす? 」
「 そうよ。 あのね、 涼しくすごせる着る物もいろいろあります。
ごめんなさい、そのお洋服は今風で可愛いけれど ・・・ この気候にはちょっと合わない
かもしれないわね。 」
「 え ・・・ あ ええ ・・・べたべたして・・・・ 」
「 失礼なことを言ってごめんなさいね。
さっき私の傘が濡らしてしまいましたし・・・ ねえ お着換えなさらない? 」
「 え ? 」
「 こんなじめじめした日に ちょうどいい衣類があるの。
私からのお礼だと思って着てください? 」
「 あ あの ・・・ よろしいのですか? 」
「 はい 勿論。 ねえ オジイサン、浴衣の仕立て下ろしがありましたよね? 」
「 ・・・・ そうじゃった そうじゃった うん、あれをお召しなさるといい。 」
「 ・・・・ ???? 」
フランソワーズは ? を乱発しつつ ・・・ 別室について行った。
「 これ ・・・ タオル とは違いますねえ? 」
「 はい、これはね、手ぬぐい といって・・・ 日本の<タオル> なの。
昔はこれで顔や手を拭いたりお風呂でも使いました。
縫い合わせて浴衣にしたりオムツにしたりもしたのよ。 」
「 まあ ・・・ さらさらしていい気持ち・・・ 」
フランソワーズは初めて見るものばかりで もう目がまん丸になりっぱなしである。
ムッシュ・ハタナカ と マダム・ハタナカ は 梅雨時の過し方について教えてくれた。
きっちり着せてもらったのは ぴっしりと糊のきいた浴衣。
裾には観世水がながれ露草模様が涼しげである。
「 苦しくない? 大丈夫かしら。 」
「 はい、ぴし・・・っとしていい気持ちです。 それに ・・・ 涼しい・・・
袖も裾も長いのに ・・・ 不思議ですねえ 」
「 ふふふ 浴衣はねえ、身体を覆っているようで風通しもいいようにできていますの。
あら あなた、姿勢がいいのね、とてもよくお似合い・・・ 」
「 本当だなあ。 近頃の若い連中にみせてやりたいわい・・・ 」
「 ああ でも若くて素敵なお嬢さんには柄が地味すぎましたね、ごめんなさいね。 」
「 ・・・ いえ ・・・ そんなこと ・・・
わたし、 この模様とても素敵だと思います。 夕方の夢みたいな風景ですね。 」
フランソワーズは熱心に自分の裾模様を眺めている。
冷房のない部屋、 でも半分開いた縁側からは涼しい風が入ってくる。
チリ −− ン と風と一緒に清んだ音も聞こえる。
庭先を眺めれば 大きな木は少ないけれど低い茂みがそちこちにあり 白くて香りの良い花が
咲いていたり ・・・ 庭の外れには池もみえた。
「 ― とても爽やかですねえ ・・・ 」
「 庭にな、緑が多いと真夏でも案外涼しいもんです。
お父上は園芸の趣味とかお持ちではないですかな? 」
「 あ ・・・ ボンサイ、というのですか? 鉢の植えたちいさな木を大切にしています。
こちらのお友達から譲ってもらった・・・って・・・」
「 ほう〜〜 それは それは。 一度お目にかかりたいですなあ〜 」
「 まあ そうしてください。 ち・・・父も喜びます。 」
夏の日除けの簾 や 葦廉 ( よしず )、 風鈴と蚊遣り、そして扇子に団扇 ・・・
彼女の目の前には 初めて見るものが並んでいた。
「 ・・・ 本当に ・・・ ここのお家は気持ちがいいですねえ。 」
「 その土地にはその土地に合った暮らし方がありますから・・・
お嬢さんのお家も 和風のものを上手く取り入れられたら快適にすごせますよ。 」
「 そうじゃなあ〜 岬の上ならばいい風が通るでしょう・・・
そうそう、釣りなんぞに出られるのも楽しいですよ。 」
「 はい! 皆に薦めてみますね。 」
じめじめして憂鬱な ― はずの午後、 フランソワーズは実に爽やかに過した。
オヤツの マメ寒 が特に気に入ってしまった。
寒天の作り方を マダム・ハタナカにしっかりと教わった。
「 ― ずいぶん長い時間、お邪魔してしまいました。 ありがとうございました。 」
「 いえいえ 私たちが引きとめてしまったのよ・・・ こちらこそごめんなさいね。 」
「 荷物は持ちやすいようにしておいたよ。 これならいいじゃろう? 」
「 ありがとうございます! あ ・・・ このユカタ・・・ お洗濯してお返ししますね。
あの 着て帰れたら本当にいいのですけど ・・・上手く歩けるか自信なくて 」
「 すぐに慣れますよ。 夏には上手にお召しになれるわ、きっと。 」
「 そう・・・なりたいです。 」
ひらひら服が恥ずかしかったけれど、胸にしっかり抱いている浴衣が なんだかとてもうれしくて
フランソワーズは頬を染め 何回もお辞儀をしていた。
「 本当に車を呼ばなくてもいいの? ここからだとお家までは ― 」
「 平気です! それよりも、今度はお店の方に伺いますね!
わたし ・・・ これからは商店街でお買い物、することにします。 」
「 おお それはありがたいなあ。 緑風園も宜しくお願いします、お嬢さん 」
「 はい。 美味しいお茶の淹れ方、教わりに伺いますわ。 」
「 ・・・ あら? 雨も上がったみたいですね・・・ 」
― カラリ、 と玄関のドアを繰ってでてみれば明るい梅雨の晴れ間が覗いていた。
フランソワーズは門の前でもう一度 深くお辞儀をしから歩き始めた。
「 ふふふ ・・・ 楽しかったァ〜〜 そうだわ、帰りにはお魚屋さんに寄ってゆこうっと。
あと カンテン! あれを買って今晩のデザートにするわ。
・・・ あ ジョーはお肉に方がいいのかなあ・・・? 」
あれこれ考えつつ 彼女は地元商店街をゆっくりと進んでいった。
― ガッタン ・・・
昼間のローカル線は の〜んびり動きだしの〜んびりと走り去っていった。
「 ・・・ どうしよう ・・・ 戻ってきちゃった・・・ 」
ジョーはホームに降り立ったまま、電車のオシリをぼ〜〜〜っと眺めていた。
両手には ― 年配のご婦人向け の 夏服が一式。
・・・ なんだって買っちまったんだよ〜〜
これ ・・・ フランにプレゼント・・・なんてできるわけないじゃん〜〜
・・・ あのショールっぽいのは いいなあ〜って
フランの髪の色にあってるな〜って 思ったけど・・・
手触りもなんかさ〜 気持ちよくて ・・・
あ。 フラン・・・ ! どこに居るんだよ〜〜う・・・
ホームには人影もまばらになり 駅員の視線がちろちろコチラに向いてくる。
「 ・・・ ・・・・ 」
ジョーはともかく歩きだし、自然の流れで改札口を出た。
「 お〜〜〜〜い!! フランソワーズぅ〜〜〜〜 どこだ〜〜〜 」
閑散とした駅前ロータリーで 彼は思わず ・・・ 叫んだのだった ― 脳波通信で。
≪ はい? ジョー? ≫
間髪をいれず、ジョーのアタマの中に ― 彼女の声が響いた。
「 え?!? わ わ わ??? な なんだ〜〜 」
≪ ジョー? なあに? ねえ 脳波通信、使って! ≫?
「 ・・・え? あ ああ ・・・ ご ごめん ・・・ ≪ フランソワーズ?? ≫
≪ はい、だからなあに。 ジョー、あなた今どこにいるの? ≫
≪ え あ 〜〜 え 駅前 ・・・ ≫
≪ 駅前?? あら どこか出かけたの? ≫
≪ え ・・・ あ ・・・ ウン まあ ・・・ ≫
≪ ふうん? ねえ? 一緒に帰りましょうよ。 わたし、今ね商店街の真ん中にいるの。 ≫
≪ 商店街? あ ・・・ ハラジュクとかモトマチとか? ≫
≪ ハラ と モト ?? なあに、それ。 ≫
≪ え い いや その。 きみのいる商店街って あのう? ≫
≪ なに? はっきり言ってよ。 ≫
≪ あの ・・・だから そのぅ〜 どこの商店街にいるのかな〜って思って ≫
≪ 商店街っていったらここだけでしょう? ≫
≪ ・・・だから さ その ここ って ≫
≪ ?? 海岸通りの商店街よ? ≫
≪ え!!! ≫
≪ うわ・・・ ちょ・・・っと〜 いきなりトーンを上げないで・・・ 頭痛がするわ ≫
≪ ご ・・・ ごめ・・・ん あのあの・・・ きみっていま海岸通りにいるわけ? ≫
≪ だからそうだって何回も言ってるわ。 ≫
≪ あ ・・・ご ごめん ・・・ うん! うん! 今すぐに行くから〜〜
・・・帰ろう〜〜 い 一緒に !!!! 加速装置・・・・っと ダメだァ ・・・
加速したら この服が・・ ≫
≪ ジョー? ・・・・ 大丈夫? どうか したの? はっくしょ〜〜ん ・・! ≫
≪ あれ?? どうした、寒いのかい? ≫
≪ う ううん ・・・ ちょっと服がね、濡れて着替えたけど なんか・・・ ≫
≪ ・・・ あ アレ いいかも・・・ さっき買ったアレ ≫
≪ え?? なに ジョー? なにに勝ったの?? ≫
≪ あ ・・・ う うん なんでもないよ、 今すぐ・・・・じゃなくて。
次のバスに乗るから ・・・ 待ってて! ≫
≪ おっけ〜。 うふふ ・・・ ねえ ジョー? 今晩、なにが食べたい?
・・・?? ジョー? ・・・・ あらあ??? ≫
駅前ロータリーを 茶髪の青年がやたらと張り切って横切っていった。
ふんふんふ〜ん♪ ハナウタを歌いつつ ・・・手にした紙袋をやたらぶんぶん振り回しつつ・・・
その日以来 ・・・・ 岬の洋館では窓際に簾がさがり軒下には風鈴が揺れるようになった。
どの窓の大きく開かれるようになり 住人たちも地元へと頻繁に出かけている。
「 うん・・・ これはいいな。 これからは部屋着はこれにしよう・・・ 」
「 うわあ 博士、・・・なんか決まりすぎて凄いや〜〜 」
「 まあ なあに、ジョーったら。 褒めているつもり? 」
浴衣を着こなした博士の周りで同居人の2人が騒いでいる。
フランソワーズは持ちこんだ < この気候にあった暮し方 > は 岬の住人たちの生活に
大いに変革をもたらした。
博士の浴衣もその一つ、彼はすっかり気にいったらしい。
「 うむ ・・・・ このごわごわした布地の感覚がいいなあ。
それにフランソワーズ、お前が言うとおり随分を風通しのよい構造になっておるなあ。 」
「 ね、博士。 ふふふ とってもお似合いですね。 」
「 ありがとうよ。 うん、夏いっぱい、これで過すことにしよう。
お? フランソワーズ ・・・ キレイなショールじゃのう・・・ 夏仕様じゃな 」
「 うふ・・・ これ、 ジョーが探してきてくれたんです。 綿レースで気持ちいい ・・・ 」
「 ・・・あ は ・・・ 気に入ってくれてよかった・・・ 」
「 あの。 ジョー・・・ ごめんなさい ・・・・ 」
「 え? なにが 」
「 うん ・・・ あの最近 イライラしてジョーに突っかかってたでしょ・・・
雨ばっかり続いて憂鬱で ・・・ つい ・・・ 」
「 そ〜んなの、気にしてないってば。
ぼくこそ ・・・ 日本のこととかちっとも知らなくて ごめん・・・
自分の国なのに ・・・ けど、 こ〜〜んな軽くて涼しい服とかあるんだね。 」
ジョーは南国素材のシャツにご満悦だ。
「 ね。 お願いがあるだけど・・・ 」
「 なあに? あ アイスなら買ってあるわよ〜 」
「 ちがうよ! あの さ 夏祭りにさあ 」
「 ・・・ わかった! 綿アメが欲しいのでしょ。 それとも 焼きソバ? 」
「 ち〜がうってば! あの ― 浴衣でさあ 一緒に行こうよ ・・・? 」
「 ― ん ♪♪ 」
なんとな〜くモジモジしている2人を 博士は手入れ中の盆栽の間からにんま〜り眺めていた。
― そんなある日 ・・・
「 博士〜〜 坂の下まで送りますよ〜〜 自転車だけど 」
ジョーが玄関の前で呼んでいる。
「 お。 そうか? そりゃすまんの〜〜 すぐに仕度するかな。 」
「 はい。 フラン〜〜 そろそろ行くよ! 」
「 ・・・ちょ・・っと 待って まって ジョー〜〜 」
ジョーとフランソワーズは 張々湖の経営する店で臨時バイトを始めていた。
週に何回か 2人は仲良くヨコハマの店まで通っている。
・・・ だって さ。 あの服・・・意外と高かったんだよ〜〜
簡単な服だと思ったのに ・・・ なんであんな値段なの??
2人とも梅雨の日の予定外の買い物で 財布が軽くなってしまったから・・・
それでいて あの日の <買い物> はナイショ・・・らしい。
「 ・・・ あの服 ・・・ どうしよう〜〜 フランにはぜ〜〜ったい贈れないし〜〜 」
「 あの服どうしよう・・・ 二度と着たくないけど捨てるのも ねえ・・・ 」
「 それじゃ 博士〜〜 タバコ屋のご隠居と緑風園さんに宜しく〜〜 」
「 行ってきまァ〜〜す ・・・! 」
「 ああ 気をつけてな、2人とも・・・ 」
商店街の入り口で博士を降ろすと、 今度はフランソワーズが後ろに乗った。
「 はい 乗りました〜 」
「 よっし。 それじゃ 出発〜〜 ・・・ よい しょ・・! 」
チリリン ・・・
ジョーは軽く鈴を鳴らし 最寄りローカル駅目指し軽快にペダルを漕ぎ始めた。
― サ −−−− ・・・・・・
梅雨のあとさきのトパァズ色の風が フランソワーズの髪を揺らし吹きぬけてゆく。
・・・ まもなく夏がやってくる。
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Fin. ***************************
Last updated
: 06,26,2012. back / index
************ ひと言 ***********
ラスト一行は 原作から、その前の行の半分は さだまさし氏の歌詞
からのパクリです〜〜 <(_ _)>
二人乗り ・・・ 見逃してください ・・・